小説って、すごい 「こちらあみ子」

感動小説

『こちらあみ子』今村夏子

📁感動小説 【私の評価】★★★★★(97点) 

簡単に言ってしまうと、少し人とは違う女の子のお話です。

今の時代、そんなもの読まなくたって、何の支障もありません。

世の中には、You Tube、ゲーム、マンガ、ドラマなど、いろんな楽しいもので溢れかえっています。

自分の時間は、楽しいもの、快適なものを次から次に見ていくのに費やされます。

そんな時代に、このような物語を読む意味があるのでしょうか。

いや、そんな時代だからこそ、この物語は読む価値があると思います。

あみ子を通して、人の悲しみが、より切実にで鮮明に、目の前に現れます。

あみ子が、人の悲しみや感情を、皮を剝いて、素のままにして、こちらに投げてくるのです。

私たちは、そのことを受け止めることができません。耐えることができません。

だって、あまりにも辛すぎる現実だから。

だから、とりつくろったり、言い訳したり、見ないようにしたり、言わないようにしたり、忘れたふりをしたりします。

でも、あみ子には、それができません。

だから、あみ子は、死産して退院した母に、退院祝いに「弟の墓」と書いた看板をプレゼントしたり、嫌がる幼馴染につきまとって「好きだ」と連呼したり。。。

読後、小説って、こういうものなんだと、嘆息しました。

どうやったら、こんな作品が書けるのだろう。

素晴らしい作品に出会いました。

ちなみに、作中の広島弁が、作品全体を柔らかくしてくれて、とてもいい感じです。

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