鈍感な中年男性に降りかかっていた異変  「悪寒」

ミステリー小説

『悪寒』伊岡瞬

📁ミステリー小説 【私の評価】★★★★☆(82点)

社内の権力争いに巻き込まれて地方に左遷され、単身赴任した中年社員の主人公。

慣れない営業で上司からは怒鳴られ、鬱々とした日々を送る中、東京で娘と母と暮らす妻から一通のメールがあり、事態は急展開します。

単身赴任中に、妻に一体に何が起こったのか。

妻からの謎の一通のメールを見て、主人公は急いで東京の家に戻ります。

いつもは「中年の鈍感さ」をいかんなく発揮している主人公が、妻からの不可解な一通のメールを受け取って、何か良くないことが起きている、起きようとしているかのような「悪寒」を感じ、急いで東京へ戻る、そういうお話なのです。

単身赴任をされた経験がある方であれば、一緒に暮らしていれば何とも思わないようなことでも、家族と離れているがゆえに、電話越しに家族と交わした言葉や様子がちょっと気になって、心配になったりしたことはないでしょうか。

家族と離れているがゆえに、家族のことに敏感になるということはあるのではないかと思うのです。

もし、主人公が単身赴任をしていなかったら、単身赴任という家族と離れた不安定な状態ではなかったら、妻から同じメールをもらったとしても、主人公は引き続き鈍感なままで、「悪寒」を感じることができなかったのではないか、私はそう思います。

この主人公の「悪寒」が、物語のスタートになっています。

また、ネタバレになってしまうため、詳しくは書きませんが、予想を見事に裏切ってくれる真犯人には、脱帽でした。

そして、その真犯人の動機も、身に迫って来るものがあります。

とても良作なミステリーだと思います。

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