『包帯クラブ ルック・アット・ミー』天童荒太
【私の評価】★★★★☆(83点) 📁感動する小説
インパクトのある題名ですが、題名からは、どんな話なのか全く想像がつきません。
ですが、読後には、じんわりと心を暖かくさせてくれる、感動の作品となっています。
この作者の作品では、「悼む人」を読んだことがあり、その独自性に衝撃を受けました。
この作品も、作者ならではの世界観が展開されていて、胸に迫ってくるものがあります。
真っ正面からの正義感を満ち溢れさせた人助けではなく、この世界をあるがままに受け止め、労り、そして生きていく。
そういう想いが、この作品の根底に、確かな決意のように滔々と流れているように感じられました。
みんな日々、いろんなことに傷つき、疲弊しながらも、何とか日々を送っている。
だからこそ、私たちは、お互いに「お疲れ様」と声を掛け合うのだと思います。
そのことがどんなに大切なことなのか、この作品を読むと深く考えさせられました。
登場人物の一人一人が丁寧に扱われていて、脇役は一人もいない。みんなが主役になるように書かれていることも、この作品の魅力です。
そんな個性的な仲間が一つになれているのは、何と言っても、主人公ワラの彼氏とも言うべき存在である、ディノのキャラのおかげ。
普段はふざけていますが、たまに本質を突いた鋭いことを言ってみんなをリードします。
そんな彼自身、迷う中で必死にもがいている姿にも、胸を打たれます。
生き方にちょっと苦しくなった時に、傍らにいて、そっと寄り添ってくれる、そんな作品だと思います。
疲れた時には、疲れたと言っていいんですね。
皆さま、日々、お疲れ様です。
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