『知事失格』小林一哉
📁世の中のリアル 【私の評価】★★★★☆(85点)
かなり衝撃的なタイトルです。
「知事失格」というのは、どこの知事のことなのでしょうか。
そして、「失格」という、最大級の批判の言葉を使っているのは、なぜなのでしょうか。
この本は、地元記者である筆者が、川勝静岡県知事に対する、リニア工事にストップをかけている姿勢に対する告発本ともいうべきものになっています。
この本からは、筆者がとても丹念に取材をした様子がわかりますし、説得力もあると感じます。
一方で、筆者の主張をそのまますべて受け入れることについても、違うのかもしれません。
一つ言えることとしては、今までリニアについて、あまり考えたことがありませんでした。
本書を読んで、リニア問題を前に進めるにしろ、少し立ち止まるにしろ、もう少しこのリニアについて、私たち国民として関心を持つべきなのかもしれないと思いました。
リニアが開業すれば、東京-名古屋間については、現在の1時間半が、40分に短縮され、東京-新大阪については、現在の2時間半が67分に短縮されるようです。
これだけの所要時間の短縮となれば、仕事の上でも、レジャーの観点からも、東京、名古屋、大阪という日本の三大都市がより緊密に結ばれ、大きな経済効果を生み、利便性が大いに向上するなど、恩恵は大きいことは間違いないでしょう。
一方で、リニアの通過駅にとっては、あまりメリットもなく、むしろ地域経済の衰退や、開発に伴う環境問題(静岡県が主張する水資源の他県への流出問題)などのデメリットが懸念されるということも、よく理解できます。
このリニアの問題は、影響が日本全国に及びますので、地域の問題ではなく、日本全体の問題です。
どの自治体も等しく利益を得るということが難しい中で、どうしたらよりベターなものになるのか。
国、関係自治体、JR東海で、建設的な議論と知恵を出し合い、そして私たち国民はその議論の行方に関心をもって見ていく。
そして、次世代のために、最後は何かしらの結論を出していくということが、求められると思います。
日本を密接につなげるリニアが、日本国内の意見の対立や分断につながることだけは、避けたいですね。