『黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』ブライアン・スティーヴンソン (著)、宮﨑真紀(訳)
📁世の中のリアル 【私の評価】★★★★★(93点)
著者のブライアン・スティーヴンソンは、アメリカのアラバマ州で、冤罪で死刑判決を受けた黒人を無料で支援するNPO団体の黒人弁護士です。
本書は、ブライアン弁護士が自身の体験を綴った、ノンフィクションとなっており、カーネギー賞優秀ノンフィクション賞を受賞しています。
自由で、誰にでも平等にチャンスを与える、憧れの国アメリカ。
私はアメリカに対して、そんなイメージを持っていました。
しかし、本書の内容は衝撃的でした。
これがアメリカという国だとは、にわかに信じられない内容です。
もちろん、アメリカは州によって、死刑を認めるかや、少年事件の扱い方は違うようです。
ですが、本書の中で書かれていることもまた、アメリカという国で起きているリアルだと思いました。
何の証拠もないまま、黒人だからと、あらゆる証拠が捏造され、簡単に死刑判決が出てしまいます。
13歳の少年であっても、成人と同じように裁かれ、死刑判決や終身刑を言い渡され、成人刑務所に収監され、刑務所内でレイプされ、死刑囚は少年でも電気椅子で処刑されます。
不倫の子をひそかに妊娠後死産したにも関わらず、殺人を疑われ、いい加減な検死官が窒息死させたと診断し、死刑判決を受けてしまう事例もありました。
少量のドラッグや窃盗などの軽罪で長期の刑に服役している人が多くいます。
女性受刑者の8割近くに未成年の子が同居しているため、母親が収監されると、子供が生きていけない危険な状態にさらされるようです。
母親が釈放されても、麻薬犯罪で有罪となると、公的な金銭の給付が禁じられる州があり、出所後、公営住宅に住めず、食料配給券ももらえず、福祉サービスも受けられない母親と子供という最下層が誕生します。
女性刑務所では看守によるレイプや、刑務所付きの牧師でさえ、礼拝堂に来た女性受刑者をレイプするほど。
例え、冤罪で釈放されても街の人はそう見ないし、地元紙は犯人扱いします。
釈放後も街で暮らしていくために、全国放送の報道番組に取材してもらい、街の人々にもひょっとしたら冤罪なのかなと思ってもらうという、著者が語る戦略には驚きました。
人は、たとえどんなに悪いことをしたとしても、それだけの存在ではないという著者の言葉には、胸を打たれます。
正義とは。
公平とは。
それは、正義の味方のヒーローが悪者をこてんぱんにやっつけるという、単純なことではないのです。
捕まえた悪者をどう扱うか、そこにこそ、正義や公平が試されているのだと、感じさせられました。
是非、読んでいただければと思います。