『さあ、地獄へ堕ちよう』菅原和也
📁ミステリー小説 【私の評価】★★★★★(96点)
物凄い衝撃的なミステリーです。
身体改造のディープな世界が描かれています。
こんな世界、小説で読むことでしか触れることができない。
「愛しているから傷つける」
「全力で愛してあげる。全力で傷と痛みを刻みつけてあげるわ」
単なるサド・マゾ小説ではありません。
痛み、傷つけることが持つ意味を、まるで実際に見ているように生々しい場面の描写を通じて、読者に問いかけてきます。
《地獄へ堕ちよう》というサイトは、一体、誰が何の目的で作り、どんな人が利用し、何が行われているのか。
ミステリー要素も満載の作品です。
第32回横溝正史ミステリー大賞の大賞受賞作ですが、この世界観の独自性は、歴代の受賞作でも唯一無二のものだと思います。
恐ろしくて、おぞましい世界。でも、何故か惹きつけられ、見続けてしまう。
あなたも、心の扉を開いてみてはいかがでしょうか。
世界観も、ミステリーも、完璧な本作品ですが、個人的には1点だけ、残念な点があります。
それは、SMバーで働く主人公の設定です。
考えることが苦手で、精神安定剤をがぶ飲みして、辛うじて生きている女の子。
ですが、後半になるにつれて、頭の回転が抜群になり、勇者顔負けの決断力と行動力を発揮します。
つまり、最初の設定と差異が生じている気がします。
このため、主人公の女の子は、病んでいる設定だとしても、知恵が足りない設定ではなく、むしろその逆で、IQが高すぎて、周りとは全く馴染めない病み方の方が、後半の快刀乱麻の活躍について、読者に不自然に映らないのではないかと思いました。
ですが、そこを差し引いても、ずば抜けて完成度が高い作品であることには変わりはないと思います。
ちなみに、この作品に出てくる、体に直接フックを刺し、ロープで吊るす「ボディサスペンション」という行為。
驚くべきことに、現実世界でも行われています。
私が身体改造の世界を知ったのは、「クレイジージャーニー」という番組のケロッピー前田さんの回でした。
リアルの貴重な映像もありますので、こちらもご紹介しておきます。