『占星術殺人事件』島田荘司
📁ミステリー小説 【私の評価】★★★★★(95点)
文句なしの本格ミステリー小説です。
単行本で500ページに渡る長編です。
そして、いくつもの謎が呈示され、最大の謎解きは、あっと驚く仕掛けになっています。
しかも、著者は文中で、全ての謎とそれを解くカギはもれなく呈示しつつ、我々読者に向かって、この謎が解けるか!?と、挑戦状を投げかけています。
ミステリー小説がお好きの方なら、一度は読んで見た方がよい作品です。
私がこの作品を読んで、改めて感じたのは、事件は、その事件が起きた当時の時代と切り離せないということでした。
例えば、以前は謎として成立したことであっても、今の時代はDNA鑑定など様々な技術を用いて、調べればわかることが増えたため、謎として成立しないということがあります。
また、動機にしても、事件が起きた時の時代背景が大きく影響します。
昔は、嫁・姑の間での憎しみ合いが動機になりえますが、今は核家族化が進んでおり、同居していないがために、事件を起こすまでの動機になりえないことがあります。
逆に言えば、現代ならではの新たな犯罪や動機が生まれるということです。
だからこそ、ミステリー小説は、次々と新しいものが出てくるのだと思います。
この作品は、1936年(昭和11年)の東京を舞台にしていますが、その時代をよく表している名作だと言えます。
時代とともにミステリーは生まれ、刻まれていきます。
この作品は、この先もずっと、読み継がれていくことと思います。
ちなみに、作者の島田荘司さんは、広島県福山市がご出身です。
福山市が開催する「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の選考委員を務められています。
福山市は、薔薇で有名で、駅を降りると、薔薇の香りが漂ってきます。
令和7年5月には、第20回世界バラ会議が福山市で行われるようですので、薔薇がお好きな方は、こちらもチェックしてみるとよいかもしれません。