『おわりのそこみえ』図野象
📁新鋭の注目小説 【私の評価】★★★★★(91点)
マッチングアプリで遊んで、バイトのお金では足りずに、消費者金融に借金をしながら日々を無為に生きる美帆(みほ)。
日給7500円のバイトに遅刻しないよう、2000円払ってタクシーに乗ったり、コンビニで大して欲しくないアニメのフィギア付きおもちゃを4000円払って買うものの、封を切らずに部屋の中に放っておくなど、衝動的で刹那的な行動を繰り返します。
そんな美帆は、ある日、マッチングアプリで出会ったバンドマンのアメに入れ込み、その彼女ナムちゃんと親友になりながらも、流されるまま裏切って、美帆のストーカーの宇津木から諭されるという、なんとも破天荒な物語です。
ですが、文章が本当に巧くて、美帆の心の中が手に取るようにわかります。
どうしようもない世界で、生きていればいいのか、死ねばいいのか、突き詰めて、追い詰められて、どんどん落ちて行って、その落ちた穴の底には何があるのか。
その一番最後のところは、個人的にはやりすぎ感があり、残念に思いました。
ですが、終わりに行くまでの過程が、この小説はとても面白いです。
こんな文章が書ければ、楽しいだろうなと思います。
第60回文藝賞優秀作品です。
是非、ご一読ください。