『元彼の遺言状』新川帆立 感想と解説&考察

ミステリー小説

📁ミステリー小説、新鋭の注目小説 【私の評価】★★★★★(90点)

1.あらすじ

「全財産を、僕を殺した犯人に譲る」

元彼の残した遺言状について、依頼人を犯人に仕立てあげるべく、弁護士の剱持麗子が活躍するストーリーです。

2.魅力的な点

① 剣持麗子というキャラクター

何といっても、「お金が全て!」の剣持麗子のキャラクターが立っています。

そして、物語が進むにつれて、そんな主人公の内面にも、少しだけ変化があることが面白いです。

② 謎の遺言状

「自分を殺した犯人に、全財産を譲る」

未だかつて聞いたことがない遺言状こそが、最大の謎になっています。

自分を殺した犯人に、なぜ財産をあげるのか。

逆転の発想が、このミステリーを面白くしています。

③ 数多くの登場人物が織りなす心のあや

この作品には、とても多くの人物が登場します。

そして、それぞれの人物が、大なり小なり、役割を持っています。

素晴らしいのは、作者の都合よく使われていないということです。

それぞれの人物はそれぞれ事情を抱え、それぞれの理由でちゃんと行動しています。

サブキャラクターたちなので、主人公の剣持麗子のように、その行動が逐一描かれているわけではありません。

それをいいことに、ストーリーの展開に合わせて、唐突に登場したり、都合よく帳尻を合わせるために使うのではなく、それぞれの人物の行動にしっかりと理由を持たせて行動させているからこそ、不自然さがなく、物語がいろんな登場人物から見てもちゃんと成り立たせることができているのだと思います。

これだけ登場人物が多いと、積み木のように上手く組み立てて行かないと、普通は壊れてしまいます。

それぞれの人物の心情を織り交ぜながら、丁寧に組み上げている点が、さすがだと思いました。

④ 法律の知識

作品の随所に法律の知識が出てきます。

作者は弁護士資格をお持ちで、その知識を作品にも反映しています。

公序良俗に反する遺言は無効となったり、遺言状がある場合であっても遺族には遺留分があるなど、しっかりと法律の知識が、この物語の屋台骨になっていると思います。

3.おわりに

第19回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した作品です。

作者の新川帆立さんは、You Tubeなどでも、作品の書き方など、丁寧に解説してくれていますので、そちらも楽しめるのではないかと思います。

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