ブラインドマラソンを通じた兄弟の息合わせ 「朔と新」

感動小説

『朔と新』いとうみく

📁感動小説 【私の評価】★★★★★(97点)

朔と新は兄弟ですが、朔は事故に巻き込まれて視力を失ってしまいます。

それ以来、朔自身はもちろんですが、弟の新も、そして父母も、いろんな滓がたまっています。

そんな、一見すると静寂な湖に見える沼が、朔が盲学校から家に帰ってきて、ブラインドマラソンをやりたいと言ったことで、水面に波紋が広がり、波が立ちます。

兄弟二人で、息を合わせてブラインドマラソンに取り組む姿。

それは決して、単なる感動ものではありません。

卑怯で、ずるくて、逃げたくて、そしてぶつかり合う。

未熟な二人が一緒に走る時、その心の通じ合いにも変化が訪れます。

個人的に一番好きな部分は、二人でスタートラインに付いた時の「イチニツイテ」という部分です。

「位置について」でなく、なぜ全部カタカナなのか。

そこには、兄弟でのブラインドマラソンでスタートラインの位置に付けた、そのこと自体が特別な価値があるんだという、作者の意味が込められているのではないかと感じました。

第58回野間児童文芸賞受賞作品です。

おススメです。

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