📁ミステリー小説、新鋭の注目小説 【私の評価】★★★★★(98点)
第43回小説推理新人賞受賞作です。
五つの短編で構成されています。
五つは全く別のお話と思いきや、関連していました。
そして、どう関連していくのか、最初は全くわかりません。
それぞれの短編の後半でようやく、そういうことだったのかとわかる仕掛けになっています。
よく考えられた、完成度の高い作品ですので、ミステリー好きの方は必読です。
以下に読みどころを解説します(一部、最小限のネタバレがありますので、ご注意ください)
1.爆弾犯と殺人犯の物語
本の題名にもなっていますが、この一話だけでもとても楽しめますし、お話として完結しています。
あとに続く四話は、この一話の続編、スピンアウト編だとお考えいただければと思います。
主人公の僕は、小夜子に恋をします。
その恋はすこし歪んでいます。
僕は、小夜子の左目の義眼に恋をしているのです。
なぜ僕は小夜子の義眼に惹かれるのか。
その理由もまた衝撃的なものでした。
せっかくですので、書かずにおきたいと思います。
是非、読んで見ていただければと思います。驚きです。
2.砂漠にサボテンは咲かない
第一話と全く別のお話だと思っていました。
それはほとんど正しかったのですが、最後に第一話との関連が出てきます。
この第二話を読んで、事件というのは、その事件に関わった直接的な人々だけではなく、一見して全く関係がない人々にも影響を及ぼすものであることを認識しました。
だからこそ、この世の中で起きる出来事とその帰結は、複雑で予想ができず、偶然の重なりとしか言えないほど面白いのだと思います。
3.耳を塞いで口をつぐむ
第三話は、第一話の続編です。
第三話だけ、最初から第一話の続編であることが明確にわかります。
そして、第三話は第一話の二倍以上の長さとなっています。
事件が起こった後も、その事件の関係者たちの人生は、そこから長く続いて行きます。
事件から受ける束縛は、その後も当事者たちをより強く締め付けます。
耳を塞いでも口をつぐんでも、これからもこの事件にずっと付き合っていかないといけない、そんな物語です。
4.僕には印がついている
このお話が一番驚きました。
全く別のお話だと思いましたが、そうではありませんでした。
第三話のその後のお話で、事件は主人公の子供にまで影響が及ぶというお話です。
5.奇跡の二人
事件の被害者側のお話です。
事件には加害者と被害者がいますが、主人公がどちら側にいるかで、どうしても加害者側の視点、被害者側の視点のどちらかによってしまいます。
この作品では、短編に分けることで、加害者と被害者それぞれの視点から、事件のその後を描いています。
6.おわりに
よく考えられた作品だと思います。
特に、秘密を小出しに出していく技術が素晴らしく、読者を飽きさせないです。
おススメです。