あなたならどうする? 「どうする家康」

ドラマ

📁ドラマ 【私の評価】★★★★☆(85点)

はじめに

はじめに告白します。

大河ドラマを、最初から最後まで見たのは、「どうする家康」が初めてでした。

そして、大河ドラマの魅力に取り付かれてしまいました。

大河ドラマをちゃんと見てみようと思ったきっかけを、少しお話します。

それは、三谷幸喜さん脚本で話題になった「鎌倉殿の13人」を途中から見始めて、面白いと感じたことが一つです。

それから、もう一つあります。

当時、「嵐」が解散する際に、解散後にそれぞれ何をするか、番組内でメンバー同士で話をしていた時です。

メンバーの一人の桜井翔さんが、「まつじゅんは、大河が決まっているんだよね」と、松本潤さんに話を向けていたことが、私の記憶に残っていたためでした。

あれだけの国民的なスターのお一人が、歴史上の大人物の家康を演じる。

一体、どんなドラマになるのだろうと、興味を持ちました。

と同時に、大河ドラマの主役を引き受けた松本潤さんの決意に、尊敬の念を持ちました。

良いこともあれば、大変なこと、批判、プレッシャーなど、主役を引き受けることで背負うものは、計り知れないものがあると思います。

グループの解散後、前を向いて、大きな仕事に立ち向かって行こうとしている。

松本潤さんの新しい挑戦を、見てみたいと思いました。

大河ドラマはつまらない?

私自身は、大河ドラマは、起伏がなくて、つまらないものだと思っていました。

ですが、「鎌倉殿の13人」を途中から見始めて、それは間違いだと気づきました。

そして、「どうする家康」を見て、大河ドラマは、なんて面白いコンテンツなのだろうと感じました。

一番驚いたのは、遠い昔の人物なのに、身近に感じられるくらい、生き生きと描いていることでした。

歴史上の有名な人物だって、私たちと同じ人間です。

冗談も言うし、ドジなところもあるし、失敗もするし、泣き笑いしながら、生き抜いてきたのです。

そんな、普通の人間を描く人間ドラマに、私は引きずり込まれました。

「どうする家康」のあらすじとキャストについて

あらすじ

あらすじを簡単に書きます。

主人公は、松本潤さん演じる徳川家康。

幼少期から生涯を終えるまでの一代記となっています。

家康は、その一生を通じて、織田信長、豊臣秀吉など、様々なユニークな人物と出会っていきます。

その出会いは、決して楽しいことばかりもたらしてくれず、むしろ家康にとって苦悩ばかりをもたらしたと言ってもいいかもしれません。

まだ独り立ちする前の家康は、平和を愛し、戦争が大嫌いな青年でした。

その姿は、今にも織田信長に取って食われそうな、白ウサギのような穏やかさを愛する青年でした。

そんな家康でも、一国一城の主です。

周りの家臣に叱られ、鍛えられ、支えられて、じきに家康は、「わしが皆を守るんじゃ!」と、虎のようあ咆哮をあげることができるまでになっていきます。

ですが、心は、平和を愛する優しい白ウサギのまま。

周囲は、家康が望む方向とは真逆の、群雄が割拠する戦国時代。

明けても暮れても、戦いの日々。その激しさは増していく一方です。

そして、戦国時代の怖いところは、一寸先は闇。

いや、闇どころか、一寸先は死なのです。

判断を誤れば、即、討ち死に、切腹が待つ世界。

そして、生死をかけた判断を迫られる場面が、何度も家康に迫ります

「どうする、家康」

家康が、どんな想いで、どのような選択をして、その結果を、どのような心持で受け入れたのか

家康の心の動きを真ん中に置いて、描いた作品になっています。

キャスト

主役の徳川家康には、松本潤さん。

織田信長には、岡田准一さん。

ドラマの中では、織田信長にいいように翻弄される家康が描かれています。

事務所の先輩である岡田さんと、後輩の松本さんのキャスティングが、より面白いものに感じさせてくれました。

豊臣秀吉には、ムロツヨシさん。

秀吉の、ひょうきんで、人を惹きつける能力と、狂気じみて恐怖さえ感じさせる執着を、持ち前の演技力で見事に表現されていました。

信長の妹のお市と、秀吉の側室の茶々には、一人二役で、北川景子さん。

男勝りの勢いだけでなく、その中に隠された迷いや、家康への思慕の念が、抑えられて表現されているからこそ、よく伝わってきました。

これだけでも、すごいメンバーです。

ですが、「どうする家康」の物語では、もっと違うところに、より強い照明を当てていました。

それは、家康の妻子、それから家臣です。

家康の正室の瀬名には、有村架純さん。

穏やかで、芯が強くて、迷う家康をずっと支えます。

家康と瀬名の子である信康には、細田佳央太さん。

瀬名と信康は、戦のない世の中を目指し、諸国大名に呼び掛けて、信長に対抗する勢力を作ろうと画策して失敗した責任をとり、自害します。

そのことが、生涯、家康の脳裏に深く刻まれます。

最終回、老いた家康のもとに、このお二人が登場するところは、深い感動がありました。

そして、家康の家臣についてですが、酒井忠次には、大森南朋さん。

石川数正には、松重豊さん。

このお二人が、幼い家康を叱り、迫り、なだめ、助けながら、家康を立派な殿様にしていきます。

本多忠勝には、山田祐貴さん。

本多正信には、松山ケンイチさん。

武勇に優れ、血気盛んな忠勝と、知恵に優れ、冷静沈着な正信がいたからこそ、家康は戦を生き抜いてこられたのではないでしょうか。

他にも、書ききれませんが、榊原康政、井伊直政、鳥居元忠、大久保忠世、夏目広次、平岩親吉など、「どうする家康」を見た後に、頭に想い浮かんでくる顔は、こうした家康の家臣たちの顔でした。

みなさん、それぞれ個性的ながらも、家康という殿の前で、一致団結して、大きな存在感を出していました。

「どうする家康」は面白いのか、つまらないのか

「どうする家康」の評価については、いろんな意見が出ています。

大河ドラマの歴代で、最後から二番目の低視聴率だったとの記事も見かけました。

最近は、リアルタイムではなく、録画してご覧になられる方も多いと思いますので、視聴率がどの程度、実態を表しているかということはあると思いますが、とは言え、一つの指標になることは間違いないのかもしれません。

私は、はじめに書いたように、大河ドラマ初心者です。

初心者だからと言われればそれまでですが、「どうする家康」は面白かったと思います。

その理由は、2つあります。

新しい家康を見せてくれた

家康のイメージは、狸です。

「鳴かぬなら 泣くまで待とう ホトトギス」

老獪で腹を見せず、噓を言っても何とも思わない図太い神経をした狸

ですが、「どうする家康」で描かれた家康は、それとは全く異なっていました

まさに、これが大河ドラマの面白さです。

基本的な史実は、どの作品でも変わりません。

そこはむしろ変えてはいけない部分です。

ですが、なぜそれが起こったのか、どういう心境でそれを指示したのかなど、背景や心情については、わかっていないことが多いのだろうと思います。

例えば、家康が豊臣家を滅ぼすきっかけとなった、鐘の話です。

私が読んだ歴史のマンガ本では、鐘の字のおかげで難癖をつける理由ができたと、喜々としてほくそ笑む家康の姿がありました。

ですが、「どうする家康」では、苦悩する家康が描かれていたのです。

大阪城を攻めるという行った行動は同じでも、そこにある家康の心情は、全く真逆に描かれていました。

大阪城攻めで、家康は、大砲を撃つ命令を出し、「これが戦じゃ。人間が行う最も非情な行為じゃ」と、涙を流しながら叫びます。

最終回で、老いた家康は、「したくないことばかりをさせられてきた」と嘆きます。

妻子を自害で失い、人殺しを重ねてきた。

信長、秀吉、信玄、真田、その他の名だたる武将たち、そして自分。

「乱世の亡霊よ、さらば」

したくないことばかりをさせられてきた家康。

苦悩し、涙し、自分の想いとは真逆の展開となり、うろたえる家康

それでも家康は、最後の最後まで、乱世を自分の代で終わらせるという強い決意を持ち続けます。

だからこそ、家康は太平の世を実現できたのでしょう。

新しい家康像を見せてくれたこの作品に、感謝です。

飽きずに見続けさせてくれた

「どうする家康」は、全62作です。

放映は、2023年1月8日か12月17日までの、約1年間でした。

ドラマにすると、4クール分となります。

私も過去に、大河ドラマを見始めたことはありました。

ですが、最初の何話を見て、ドロップアウトしていました。

この作品では、その点、とても工夫がしてあると思いました。

そのおかげで、私は、はじめて最初から最後まで見ることができました。

それは、題名が示していました。

「どうする家康」

毎回、家康が切迫した状況の中、判断を迫られた場面で終わるのです。

だから、次が見たくなります。

番組終わりには、「どうする家康」というナレーションとともに、家康の兜が映し出されます。

面白いのは、兜の中の顔が、次々にいろんな人の顔に変わるのです。

まるで、「あなたが家康の立場だったら、どうする?」と問われているような気がします。

それが、家康という歴史上の大人物を身近に感じさせ、家康も苦悩を重ねる一人の人間なのだと気づく仕掛けのようなものになっているのだと感じました。

その時その時の選択の積み重ねにより、人生が成され、歴史が造られていく。

そして、その選択の積み重ねの結果を受けて、人間の苦悩は深く深くなっていく。

脚本は、ドラマ、リーガル・ハイやコンフィデンスマンJPを手掛けた、古沢良太さん。

さすがだなと、感じました。

おわりに

「どうする家康」のおかげで、大河ドラマの魅力にすっかり取り付かれてしまいました。

大河ドラマは、昔のことでいて、どこかしら現代にも通じる苦悩や希望が描かれている気がします。

なお、蛇足ですが、家康が身に着ける兜や着物にも目を惹かれます。

日本の文化がふんだんに散りばめられている、これも大河ドラマの唯一無二の魅力だと思います。

大河ドラマは見たことがないという方、是非、その世界に、触れてみることをおススメします。

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