どんな人生でも最後に必ず華が咲く 「ミシンと金魚」の感想と解説&考察

新鋭の注目小説

「ミシンと金魚」永井みみ

📁新鋭の注目小説 【私の評価】★★★★★(92点)

題名からは想像がつかないほど、壮絶な物語でした。

ミシンと金魚。

題名からの印象として、柔らかな、優しい物語を想像していました。

それが見事に裏切られました。

認知症のカケイおばあちゃんが、自分の人生を回想するように、物語は進んでいきます。

認知症のおばあちゃんなので、話が少し飛んだり、脈絡か少し分かりにくかったり、人物の関係性が謎のままで後から分かったりします。

ですが、この作品はそれを効果的に使っています。

カケイおばあちゃんの壮絶な人生を、一度にではなく、徐々に明確にしていくことで、読者が、カケイおばあちゃんが背負ってきた計り知れない人生の重荷に、ついてこられるようにしているのだと感じました。

老いは誰にでもやってきますが、つらい現実にさらされてきた人生を送った一つの老いと終わりの形を呈示した、素晴らしい作品だと思います。

壮絶な人生を、こんな形で描ける人に、初めて出会えました。

第45回すばる文学賞受賞作品です。

おススメです。

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