『人間みたいに生きている』佐原ひかり
📁新鋭の注目小説 【私の評価】★★★★★(91点)
題名に惹きつけられました。
「人間みたいに生きている」って、どんな物語だろう。
食べ物を口に入れると、死骸を咀嚼していることを意識して吐いてしまう少女、唯。
そんな唯が、町外れの古い洋館に住む泉と出会います。
彼も食べ物を食べることができず、血を飲んで生きています。
吸血鬼の物語かと思いましたが、泉は吸血鬼ではなく、そういう病気です。
唯も泉も同類だと思いながら読み進めていると、ガンと頭を殴られるような衝撃を受けます。
そして、題名の「人間みたいに生きている」という本当に意味もわかります。
「人間の唯一で絶対の定義はないのに、みんなが人間代表だという顔で生きている」
私たちも、唯も、泉も、誰一人として同じ人間はいない。
そして、だれもが人間みたいに生きている。
だから、誰も排除されずに、違いを違いとして受け入れて、生きていこう。
この作品には、そういうメッセージが込められているように思いました。
暗くなりがちなストーリーですが、決してそうはなっていないところに、作者の筆力の素晴らしさがあります。
軽快なテンポで読んでいくことができますし、唯という一人の少女の内面が、スッと入ってきます。
おススメです。
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