『利休にたずねよ』山本兼一
📁ミステリー小説 【私の評価】★★★★★(95点)
第140回直木賞受賞作です。
物語は、利休が豊臣秀吉に切腹を命じられたところから始まります。
そして、切腹の何日前、何か月前、何年前というように、年数を徐々に遡って物語が書かれていきます。
最初は少し戸惑いました。
なぜなら、通常は未来に向かって話が進んでいくからです。
ですが、この物語は過去に向かって話が進んでいきます。
なぜこのような書き方をしたのだろうと思いました。
ですが、最後まで読んで、こうでなければならなかったのだと合点しました。
この作品をミステリー小説の分類に入れるのは、少し違うのかもしれません。
ですが、この作品は、大きな謎を最初に提示していますので、広義としてミステリー小説に入れました。
この作品の謎とは、利休が最も大切にし、秀吉に所望されても決して渡さなかった「緑釉の小壺」は、誰からのもので、どうやって手に入れて、なぜ命に代えてまでも大切にするのかというものです。
そして、その答えは、青年時代の利休が、ある外国の女性と出会ったことにありました。
このシーンを物語の最後にもってくるために、昔に遡っていく書き方にしたのだと思います。
クライマックスとも言うべきこのシーンを読むと、利休の原点がここにあったことがわかると同時に、今までの読んできた、つかみどころのない利休の生き方が、一本の背骨をもってスッと立ち上がった気がします。
侘び、寂びの境地は、私にはとても近寄り難い、難しいものなのかなと思っていました。
ですが、この作品を読んで、フィクション要素が多く入っているのだとしても、利休をとても身近に感じることができましたし、もっといろんなことを利休に聞いてみたいという気になりました。
利休の切腹、誠に口惜しいものでした。
是非、ご一読ください。
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