神レベルの「かまってちゃん」が登場 「ステパンチコヴォ村とその住民たち」

文学的名作

『ステパンチコヴォ村とその住民たち』ドストエフスキー

📁文学的名作 【私の評価】★★★★☆(89点) 

ドストエフスキーと聞くと、尻込みしてしまう人が多いのではないでしょうか。

分厚くて重い雰囲気なので、読むためには気合がいるとお感じになる方もいると思います。

でも、この作品は大丈夫

ドストエフスキーのファンでも、この作品を読んだことがある人は多くはないようですが、隠れた名作です。

しかも、気軽に楽しめる作品となっています。

それはなぜか。

まず、この作品の大半が、多彩な登場人物たちの会話から成り立っており、話が流れるように展開していきますので、スラスラ読めます。

また、物語が展開される舞台は、語り手である主人公のおじの家ですので、場面展開がクルクル変わって、読んでいて疲れてしまうということもありません。

さらに、作品の主題・テーマが重くなく、どちらかと言うと、滑稽で面白いものになっていることも、読みやすさを感じる要素となっていると感じます。

そして、何よりも、この作品が魅力的である理由は、おじの家に居候している、フォマーという男にあります。

お金も地位もない男ですが、みせかけの品位、うわべの教養、押しつけがましい自己犠牲を、巧みな弁舌を駆使して周囲にまき散らします。

フォマーは、一言で言うと「かまってちゃん」であり、自分中心でないと我慢がならない人間です。

そして、周りの人間は、家の主であるおじも含めて、フォマーに見事に操られています。フォマーを褒めたたえ、ひれ伏し、ご機嫌をとることにかけて、我先にと、一生懸命になっているのです。

なぜ、ただの居候であるにも関わらず、敬い、崇めることになってしまうのか。

少し話は逸れますが、ここ日本でも、過去には、例えばママ友に自分の家庭に入り込まれてお金や生活を支配されてしまうなどの事件が起きています。

そう考えますと、この作品には、ただの作り話だと笑って済ませることができない怖さがあります。その怖さこそが、この作品をより魅力的にしていると言ってもいいと思います。

フォマーほどではないとしても、フォマーの要素をもっているような人は、周りにいるかもしれません。

そういった怖さも含めて、ドストエフスキーだからと構えず、単純に楽しんでお読みいただける作品ですので、おススメです。

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